気象データから考える、山梨県の気候に合った家とは?
山梨県は、標高や地形の違いにより、地域ごとに気候条件が大きく異なるのが特徴です。夏の暑さや冬の寒さ、降水量や湿度などが地域によって変わるため、快適で安心な住まいを考えるうえでは、気象の特徴を正しく理解することが重要です。
本記事では、地元で馴染みのある区分である峡中・峡西、峡東、峡南、峡北、東部、富士北麓の6地域に分け、気象庁の観測データをもとに、それぞれの地域に適した住宅の選び方や工夫のポイントを整理しました。
峡中・峡西-甲府盆地中心部-
甲府地方気象台の近年の観測データによると、この地域の年平均気温は約16℃です。2024年には、最高気温が35℃を超えた日が22日あり、夏は非常に暑くなります。一方、冬には最低気温が氷点下を下回る日も多く、年間の気温差は30℃以上に達します。これは、内陸の盆地特有の気候で、夏の猛暑と冬の厳しい冷え込みが特徴です。
また、放射冷却の影響で昼夜の寒暖差も大きく、日中と夜間の気温差が10℃以上になる日が多いのも特徴です。ただし、未明から朝方にかけて甲府盆地の上空に下層雲が発生すると放射冷却が遮られ、特に夏季には熱帯夜(夜間の最低気温が25℃以上になる夜)の原因となります。
- 年間降水量:約1,000~1,500mm(特に夏に集中)
- 年間日照時間:約2,300時間(全国平均を大きく上回り、晴天率が高い)
- 湿度:夏季で約75%、冬季でも約60%と比較的安定
- 風向:春~夏は南西風、秋~冬は北西風※が主流
「八ヶ岳おろし」:八ヶ岳から吹き下ろす冷たく乾いた風。冬季の体感温度を一段と下げることがある。
住宅選びのポイント
峡中・峡西地域では、夏の猛暑と熱帯夜、冬の厳寒に対応できる高断熱・高気密の住宅が基本となります。さらに、冷暖房の負荷を軽減し、快適性と省エネを両立するためには、以下のような工夫が効果的です。
- 庇(ひさし)や植栽、外付けブラインドを活用し、夏は日射を遮り冬は日射を取り込む設計
- 春・秋の昼夜の寒暖差を活かし夜間の涼しい外気を取り入れる通風計画
- 豊富な日照時間を活かした太陽光発電の導入
これらの工夫により、快適な室内環境とエネルギー効率の高い暮らしが実現できます。
峡東-甲府盆地東部-
勝沼地域気象観測所の近年のデータによると、年平均気温は約15℃です。2024年には最高気温が35℃を超えた日が21日あり、夏は非常に暑く、冬は厳しい冷え込みとなる内陸性の盆地気候が見られます。
一方、春や秋には昼夜の寒暖差が甲府盆地中心部よりもやや大きくなる傾向があります。また、年間を通じて南東からの風※が多く吹きます。
「笹子おろし」:笹子峠周辺で冷やされた空気が甲府盆地へ向かって吹き下ろす局地風の一種。この南東風が甲府方面からの南西の風と合流することで上昇気流が生まれ、積乱雲が発達しやすくなり、夕立が多くなる要因にもなっている。
住宅選びのポイント
峡東地域でも、夏の猛暑や冬の厳寒に対応するため、高断熱・高気密の住宅が基本です。さらに、冷暖房の負荷を軽減し、快適性と省エネを両立するためには、以下のような工夫が効果的です。なお、夕立が頻繁に発生することを踏まえ、日常的に使える室内干し空間があると安心です。
- 庇や植栽、外付けブラインドを活用し、夏は日射を遮り冬は日射を取り込む設計
- 春・秋の寒暖差を活かし夜間の涼しい外気を積極的に取り入れる通風計画
- 豊富な日照時間を活かした太陽光発電の導入も有効
これらの工夫により、快適性とエネルギー効率の高い住まいを実現できます。
峡南-県南部-
南部地域気象観測所の近年のデータによると、年平均気温は約16℃です。2024年には最高気温が35℃を超えた日が12日あり、甲府盆地と比べると夏の気温はやや低く、冬は比較的温暖な傾向があります。
一方、年間降水量は約2,500mmと県内で最も多く、夏の平均湿度は80%を超えるなど、年間を通じて湿潤な気候が特徴です。また、年間日照時間は約1,900時間と、全国平均と比べてもやや少なめです。
住宅選びのポイント
峡南地域では、高温多湿な気候に対応するため、高断熱・高気密の住宅が求められます。特に湿気による結露やカビの発生を防ぐ対策が重要です。
- 外気の湿度に左右されにくい高気密な構造で、計画的な換気と除湿が可能な設計
- 高断熱性能を確保し、結露の発生を抑制
- 可能な限り日照条件がよい立地を選定
- 調湿建材の導入も有効
これらの工夫により、湿度の高い環境でも快適で健康的な住まいを実現できます。
峡北-八ヶ岳南麓-
大泉地域気象観測所の近年のデータによると、標高1,000mを超える高地に位置するため、年平均気温は約12.5℃と県内でも特に冷涼な地域です。2024年には最高気温が35℃を超えた日は一度もなく、夏は涼しく過ごしやすいのが特徴です。
一方、冬の最低気温は-10℃以下になることもあり、非常に冷え込みます。また、年間日照時間は約2,300時間と、甲府盆地と同様に晴天率が高い地域です。
住宅選びのポイント
峡北地域では、冬の厳しい寒さに対応するため、高断熱・高気密の住宅が求められます。さらに、暖房の負荷を軽減し、快適性と省エネを両立するためには、以下のような工夫が効果的です。
- 冬季に日射をしっかり取り込む設計で、暖房負荷を軽減
- 日照時間の多さを活かした太陽光発電の導入も効果的(周囲が開けた立地であること)
- 雪が多いため、屋根の形状や勾配に配慮
これらの工夫により、寒冷地でも快適でエネルギー効率の高い住まいを実現できます。
東部-県東部-
大月地域気象観測所の近年のデータによると、年平均気温は約14℃です。2024年には最高気温が35℃を超えた日が9日あり、甲府盆地と比べると年間を通じて気温はやや低めですが、冬の冷え込みには注意が必要です。
また、年間降水量は甲府盆地よりやや多く、夏の平均湿度は80%を超えるなど、湿潤な気候が特徴です。年間日照時間は約2,000時間と全国平均に近い水準ですが、山に囲まれた谷間が多く、谷筋では日照が制限されることもあります。
住宅選びのポイント
東部地域では、高湿度と冬の冷え込みに対応するため、高断熱・高気密の住宅が求められます。特に、湿気による結露やカビの発生を防ぐ対策が重要です。
- 外気の湿度に左右されにくい高気密な構造で、計画的な換気と除湿が可能な設計
- 高断熱性能を確保し、冬の冷え込みと結露を抑制
- 可能な限り日照条件がよい立地を選定
- 調湿建材の導入も有効
これらの工夫により、湿潤で寒さのある環境でも快適な住まいを実現できます。
富士北麓-富士山北麓-
河口湖特別地域気象観測所の近年のデータによると、標高1,000mを超える高地に位置するため、年平均気温は約12℃と県内でも特に冷涼な地域です。2024年には最高気温が35℃を超えた日は一度もなく、夏は涼しく過ごしやすいのが特徴です。
一方、冬の最低気温は-10℃以下になることもあり、非常に厳しい冷え込みが見られます。また、年間日照時間は約2,100時間と比較的多くなりますが、甲府よりも雪日数が20日ほど多いため、積雪への備えも重要です。
住宅選びのポイント
富士北麓地域では、冬の厳しい寒さに対応するため、高断熱・高気密の住宅が求められます。さらに、暖房の負荷を軽減し、快適性と省エネを両立するためには、以下のような工夫が効果的です。
- 冬季に日射をしっかり取り込む設計で、暖房負荷を軽減
- 日照時間を活かした太陽光発電の導入も検討価値あり
- 雪が多いため、屋根の形状や勾配に配慮
これらの工夫により、寒冷地でも快適でエネルギー効率の高い住まいを実現できます。

出典:気温 気象庁「過去の気象データ 山梨県 各観測所・2024年データ」
降水量 気象庁「過去の気象データ 山梨県 各観測所・2024年データ」
まとめ
本記事では、気象庁の観測データをもとに、山梨県を6つの地域に分け、それぞれの気候特性と住宅選びのポイントを整理しました。
なお、観測データは各地域の特定地点のものであるため、同じ地域内でも場所によって気候条件が異なる場合があります。
ただし、どの地域においても共通して重要なのは、「高断熱・高気密」な住宅性能です。これを基本としつつ、地域ごとの気候に応じた工夫を取り入れることで、快適性とエネルギー効率の両立が可能になります。
さらに、本記事で紹介する住宅選びのポイントは、他地域の内容であっても積極的に取り入れることをおすすめします。