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家を長持ちさせる秘訣!劣化対策の見方

家は、建てたその日から少しずつ年をとっていきます。木材は腐ったりシロアリに食べられたり、鉄はさびたり――。こうした「劣化」をどれだけ遅らせられるかで、家の寿命は大きく変わります。住宅性能表示制度シリーズの本記事では、「劣化の軽減に関すること」を取り上げ、家を長持ちさせる秘訣をわかりやすく解説します。

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住宅性能表示制度そのもののねらいや仕組み(第三者評価、評価書の種類、10分野の全体像など)は、別記事「家選びの“共通のものさし”-住宅性能表示制度とは?」で詳しく解説しています。

「劣化の軽減」とは ─ 家も年をとる

住宅に使われている材料は、時間がたつにつれて、水分・湿気や大気中の汚染物質などの影響を受けて、腐ったりさびたりと劣化していきます。そのままにしておくと住み続けることが難しくなり、大規模な修繕や建替えが必要になってしまいます。 
住宅性能表示制度の「劣化の軽減に関すること」は、こうした材料の劣化を遅らせる対策がどの程度手厚く講じられているかを評価する項目です。評価の対象となるのは、柱・梁・壁など建物を支える骨組み「構造躯体(こうぞうくたい)」に使われる材料です。壁紙や設備のように短い周期で取り替えるものは対象とせず、「長い間ずっと建物を支え続ける部分」に的を絞って評価するのがポイントです。 
なお、「劣化対策等級(構造躯体等)」は、住宅性能評価を受ける際に必ず評価される「必須項目」の一つです。別記事で紹介している「構造の安定(耐震性など)」、「維持管理・更新への配慮」、「温熱環境・エネルギー消費量」と並ぶ、家の基本性能として国が特に重視している性能です。

劣化対策等級の見方

劣化のしにくさは「劣化対策等級(構造躯体等)」として、3段階の等級で表示されます。構造躯体などに使う材料の交換といった大規模な改修工事が必要になるまでの期間を、どれだけ延ばす対策がとられているかを表すものです。

等級講じられている対策
等級3通常想定される自然条件・維持管理条件のもとで、3世代(おおむね75~90年)まで、大規模な改修工事が必要になるまでの期間を延ばす対策
等級2同じ条件のもとで、2世代(おおむね50~60年)まで期間を延ばす対策
等級1建築基準法に定める対策(最低基準)

「世代」とは、一人の世帯主が一つの住宅を所有する期間のことで、おおむね25~30年と考えられています。つまり等級3は、「祖父母・親・子の3世代にわたって住み継げることを目指した家」というイメージです。 
ここで注意したいのは、等級3でも「90年間何もしなくて大丈夫」という意味ではないことです。雨どいの掃除や傷んだ外装材の補修など、日常的な点検・お手入れが行われることが前提になっています。家も人間と同じで、定期的な健康診断とケアがあってこそ長生きできるのです。

木造住宅ではどんな対策をするの? ─ 等級3の8つのポイント

劣化の原因と対策は、構造(木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造)によって異なります。鉄骨造では鋼材のさびを防ぐめっきや塗装、鉄筋コンクリート造では鉄筋を守るコンクリートのかぶり厚さや品質などが評価されます。ここでは、山梨県の住宅で最も多い木造住宅を例に見てみましょう。 
木造住宅の大敵は、木材を腐らせる「腐朽菌(ふきゅうきん)」と、木材を食べる「シロアリ」です。どちらも水分・湿気が大好物。そこで木造の劣化対策は、①雨水を入れない、②湿気をためない、③菌や虫に強い木を選ぶ、が基本になります。等級3では、国の評価方法基準にもとづき、家の部位ごとに次のような対策が求められます。 

部位等級3で求められる対策の例
a 外壁の軸組等
(柱・間柱・下地材など)
外壁を、雨水が入りにくく湿気を逃がす「通気構造等(外壁通気工法など)」とし、さらに地面から高さ1m以内の柱・間柱・下地材などに防腐・防蟻薬剤の処理(現場での塗布、または工場での加圧注入)を行う。太い部材(小径13.5cm以上、ヒノキなど耐久性の高い樹種なら小径12cm以上)を使えば薬剤処理によらない方法もある
b 土台高い水準(K3相当以上)の防腐・防蟻薬剤の処理をした木材(加圧注入材など)、またはヒノキ・ヒバなど耐久性の高い樹種を使う。外壁の下端には雨水を切るための「水切り」を設ける
c 浴室・脱衣室浴室はJIS規格のユニットバス(システムバス)とするのが最も一般的。脱衣室は、床にクッションフロアや塩ビシート、壁・天井にビニールクロスなど、継ぎ目のない防水性のある仕上げとし、下地にも耐水合板(床)や防水石こうボード=シージング石こうボード(壁・天井)といった耐水性のある材料を使えば万全
d 地盤シロアリが地面から侵入しないよう防蟻措置を行う。現在主流のベタ基礎なら、鉄筋コンクリートで地面全体を覆うためこの基準を満たせる。布基礎の場合は、薬剤による土壌処理などが別途必要になる
e 基礎地面から基礎の上端まで(または土台の下端まで)400mm以上の高さを確保し、雨水のはね返りや地面からの湿気から木部を遠ざける
f 床下地面からの湿気を防ぎ(防湿)、床下の湿気を逃がす(換気)。ベタ基礎なら床下全面がコンクリートで覆われるため防湿はクリアでき、布基礎の場合は厚さ60mm以上のコンクリートまたは厚さ0.1mm以上の防湿フィルムで地面を覆う。換気は、ねこ土台(基礎パッキン工法のこと。壁の長さ1mあたり有効面積75cm²以上の換気口)などで行う
g 小屋裏(屋根裏)換気口を設けて湿気を逃がす(天井面積の1/300以上の換気口を2カ所以上設けるなど、換気方式に応じた基準がある)
h 構造部材等建築基準法(施行令)に定められた構造部材の耐久性に関する規定に適合させる

よく見ると、地面に近い部分ほど対策が手厚いことがわかります。シロアリは地中から侵入し、湿気は床下にたまりやすいからです。基礎を高くする、床下や小屋裏に空気の通り道をつくる、外壁の内側に通気層を設ける――こうした「外からは見えない部分の地道な工夫」が、家の寿命を支えています。 
なお、北海道・青森県などシロアリがほとんど生息しない寒冷地では、防蟻に関する基準の一部が緩和されますが、山梨県は緩和の対象地域ではありません。しっかりとした防蟻対策が必要な地域だと覚えておきましょう。

基礎断熱と屋根断熱

最近増えている基礎断熱工法(床ではなく基礎で断熱する工法)の場合、床下は室内と同じ温熱・空気環境とみなされるため、表の「f床下」の換気は不要になります。その代わり、厚さ100mm以上のコンクリートで床下の地面を覆う(または厚さ0.1mm以上の防湿フィルムをコンクリートや乾燥した砂で押さえる)といった防湿措置と、基礎断熱材の性能確保が求められます。 
同じく増えている屋根断熱工法(天井ではなく屋根面で断熱する工法)の場合は、小屋裏が室内と同じ温熱・空気環境とみなされるため、表の「g小屋裏」の換気は不要になります。ただしその分、外壁と同様に屋根の通気層など屋根まわりの湿気を逃がす設計がきちんとされているかを確認しておく必要があります。 

豆知識
木材の樹種には、腐朽菌やシロアリへの強さに差があります。国の基準(日本農林規格JAS1083製材)では、ヒノキ、ヒバ、ケヤキ、クリ、ベイヒバなどが耐久性の高い樹種(心材の耐久性区分D1)に位置づけられており、土台など特に重要な部位にこうした木材を使うことは有効な対策の一つです。 

劣化対策等級3をおすすめする理由

等級3と聞くと、「費用がかなり高くなるのでは?」と心配になるかもしれません。しかし、かつては特別な仕様だったベタ基礎、外壁通気工法、小屋裏換気、床下の防湿フィルムなどは、現在では多くの住宅会社でほぼ標準仕様になっています。つまり、等級3で求められる対策の多くは今の新築住宅ではすでに実施されていることが多く、等級3を取得するための追加コストは限定的なのです。 
一方で、得られる安心は大きなものがあります。3世代(おおむね75~90年)住み継げる耐久性の裏付けが得られること、税制などの優遇がある「長期優良住宅」の認定にも劣化対策等級3相当の性能が求められるためその足がかりになること、そして将来家を売却するときにも性能を客観的に示せることなどです。 

基礎の高さや床下の防湿処理などは、建てた後からやり直すことがとても難しい部分です。だからこそ、新築時に「劣化対策等級3」を確保しておくことをおすすめします。 
そして、もう一歩進んだ見方をすると、いまや等級3は多くの住宅会社にとって「当たり前」の水準です。だからこそ本当に注目したいのは、等級3の基準を超えて、どこまで手厚い対策がとられているかです。たとえば、基準ではいくつかの選択肢のうち一つを満たせばよいとされている項目でも、「外壁は通気構造としたうえで薬剤処理も行う」「ベタ基礎に加えて防湿シートも採用する」「土台はヒノキを使い、さらに防腐・防蟻処理も行う」というように、複数の対策を重ねている会社もあります。こうした“上乗せ”の有無は、住宅会社の耐久性への姿勢がよく表れるポイントです。 

山梨県の気候と家の長持ち

別記事「山梨県に住む」でも紹介したとおり、同じ山梨県でも地域によって気候は大きく異なります。特に、県南部の峡南地域や県東部では湿潤な気候が特徴となっており、こうした湿度の高い山間部に家を建てる場合は、劣化対策に細心の注意が必要です。劣化対策等級3であることはもちろん、さらなる対策や丁寧な施工が長持ちする家づくりに繋がります。

まとめ

家の寿命は、目に見える設備やデザインではなく、床下・壁の中・小屋裏・基礎といった見えない部分の防水・防湿・通気・防蟻対策の積み重ねで決まります。住宅性能表示制度の「劣化対策等級」は、そうした見えない安心を数字で確かめられるものさしです。 
現在の標準的な仕様であれば、等級3の取得コストは限定的で、多くの住宅会社にとって等級3はすでに当たり前の水準になっています。注文住宅を検討するときは、「劣化対策等級3」を出発点に、そこからどれだけ手厚い対策が上乗せされているかにも目を向けて、子や孫の世代まで快適に暮らせる家づくりを目指しましょう。

主な参考資料
国土交通省「新築住宅の住宅性能表示制度ガイド」(令和7年12月1日施行版) 
日本住宅性能表示基準(平成13年国土交通省告示第1346号) 
評価方法基準(平成13年国土交通省告示第1347号) 
住宅性能評価を受けなければならない性能表示事項を定める件(平成12年建設省告示第1661号)