住宅性能表示制度5-2/
家計にも環境にもやさしい!エネルギー消費削減対策の見方
毎月の電気代やガス代――。
エネルギー価格の上昇もあって、光熱費は家計の大きな関心事になっています。実は、住まいの光熱費を左右する「基礎体力」は、家を建てるときの設計と設備選びでほぼ決まります。省エネ性能の高い家は、家計にやさしいだけでなく、二酸化炭素の排出を減らして地球環境にも貢献します。
住宅性能表示制度の「温熱環境・エネルギー消費量に関すること」では、住宅の省エネルギーに関わる性能を、共通のものさしである「等級」で表示します。ここには次の2つの評価があり、どちらも住宅性能評価を受ける際に必ず評価される必須項目で、別記事で紹介している「構造の安定(耐震性など)」、「劣化の軽減」、「維持管理・更新への配慮に関すること」と並ぶ、家の基本性能として国が特に重視している性能です。
- 断熱等性能等級:屋根・外壁・窓など「外皮(がいひ)」の断熱性能、つまり「家の器の性能」を評価するもの
- 一次エネルギー消費量等級:冷暖房・給湯・照明などの設備も含めて、「実際に家がどれだけエネルギーを使うか」を評価するもの
今回はこのうち「一次エネルギー消費量等級」の見方を解説します。家の器の性能を評価する「断熱等性能等級」は別記事で解説していますので、ぜひセットでお読みください。
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住宅性能表示制度そのもののねらいや仕組み(第三者評価、評価書の種類、10分野の全体像など)は、別記事「家選びの“共通のものさし”-住宅性能表示制度とは?」で詳しく解説しています。
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屋根・外壁・窓など「外皮(がいひ)」の断熱性能、つまり「家の器の性能」を評価する「断熱等性能等級」は、別記事「住宅性能表示制度5-1/夏涼しく冬暖かい家とは?断熱性能の見方」で詳しく解説しています。
「一次エネルギー」ってなに?
住宅では、電気・都市ガス・LPガス・灯油など、いろいろなエネルギーを使います。実はこれらは、自然界にあるエネルギーを使いやすく加工した「二次エネルギー」です。これに対して、その元になる石油・石炭・天然ガスや、太陽光・水力など、自然界に存在するままのエネルギーを「一次エネルギー」と呼びます。
電気の「kWh(キロワットアワー)」とガスの「㎥(立方メートル)」は単位が違うため、そのままでは足し算も比較もできません。そこで、すべてを一次エネルギーの熱量(単位:MJ=メガジュール)に換算して合計することで、「この家が1年間に使うエネルギー」を1つの数字で表せるようにしたものが「一次エネルギー消費量」です。電気でもガスでも灯油でも、同じものさしで公平に省エネ性能を比べられるのがポイントです。
評価の対象となる設備
一次エネルギー消費量の計算で対象となるのは、暖房・冷房・換気・給湯・照明の5種類の設備です(太陽光発電などがある場合はその効果も扱います。後述)。テレビや冷蔵庫などの家電が使うエネルギーは、住む人の暮らし方次第なので、全国一律の想定値を用い、削減対策の評価対象には含めません。 また、この計算は実際の光熱費そのものを予測するものではありません。エネルギーの使用量は家族の人数や生活スタイルで大きく変わるため、全国共通の標準的な使い方(床面積などに応じた想定条件)に統一して計算します。条件をそろえることで、住宅同士の省エネ性能を公平に比較できる仕組みになっているのです。なお、計算そのものは、設計者が国立研究開発法人建築研究所の公開する「エネルギー消費性能計算プログラム(住宅版)」(通称:WEBプログラム)に、建設地の地域区分・床面積・外皮性能(UA値・ηAC値)・設備の仕様を入力して行うのが一般的です。
前回解説した断熱等性能等級が「家の器の性能」を評価する指標だとすれば、一次エネルギー消費量等級は、器に設備を組み合わせた状態で「実際に家がどれだけエネルギーを使うか」を評価する指標といえます。
一次エネルギー消費量等級の見方
一次エネルギー消費量等級は、等級1・4・5・6・7・8で表示され、数字が大きいほど省エネ性能が高いことを表します。各等級は、「標準的な設備を備えた同じ大きさの家(基準一次エネルギー消費量)」と比べて、設計した家がどれだけエネルギーを削減できるかで決まります。なお、等級7・8は令和7年12月の制度改正で新設された、できたばかりの上位等級です。
| 等級 | 基準 (基準一次エネルギー消費量からの削減率) | 位置づけ |
|---|---|---|
| 等級8 | 35%以上の削減(太陽光発電など再エネを除く) | 「やまなしKAITEKI住宅/ZERO」の基準 |
| 等級7 | 30%以上の削減(太陽光発電など再エネを除く) | ZEH+水準 |
| 等級6 | 20%以上の削減(太陽光発電など再エネを除く) | ZEH水準(長期優良住宅の基準) 「やまなしKAITEKI住宅」の基準 |
| 等級5 | 10%以上の削減 | ー |
| 等級4 | 基準一次エネルギー消費量以下 | 省エネ基準(平成28年基準)=現在の義務基準 |
| 等級1 | 上記以外 | ー |
各等級のポイントは次のとおりです。
- 等級4:国の省エネ基準(平成28年基準)に相当する水準で、2025年(令和7年)4月からはすべての新築住宅に義務化されたため、「現在の最低ライン」となります。
- 等級6:ZEH(ゼッチ:ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)に求められる「20%以上の削減」に相当し、また、長期優良住宅の認定にも等級6以上が求められます。国では、2030年(令和12年)にすべての新築住宅で等級6への適合を義務化する予定としており、等級6は「数年後の最低ライン」となることに注意しましょう。山梨県の認定住宅ブランド「やまなしKAITEKI住宅」でも、この等級6以上が採用されています。
- 等級7: 30%以上の削減で、ZEH水準をさらに上回る、ZEH+(ゼッチプラス)で求められる省エネ水準に相当します。
- 等級8: 35%以上の削減という徹底した省エネ水準です。「やまなしKAITEKI住宅/ZERO」では、この等級8を要件としています。
断熱等性能等級との深い関係
冷暖房に使うエネルギーは、ざっくり言うと「家から出入りする熱の量(冷暖房負荷)×設備の効率」で決まります。断熱性能が低い家では、熱がどんどん出入りするため、どれだけ高効率なエアコンを付けても冷暖房負荷そのものが大きく、エネルギー消費量はなかなか減りません。器に穴が開いたまま高性能なポンプで水をくみ続けるようなものです。
逆に、断熱等性能等級6以上であれば冷暖房負荷が非常に小さくなるため、標準的な高効率設備を組み合わせるだけで一次エネルギー消費量等級6は比較的無理なく達成できますので、等級7・8とできるだけ高い等級を目指したいところです。
設備選び
具体的に、どんな設備を選べば良いのでしょうか。木造戸建て住宅で代表的なものを紹介します。
冷暖房
住宅用エアコンが最もコストパフォーマンスに優れる
住宅用エアコンは「ヒートポンプ」という技術により、電気の力で空気中の熱をくみ上げて運びます。このため、消費した電力の3~6倍もの熱を室内に運ぶことができ、電気を直接熱に変えるヒーターの数倍の効率になります。しかも幅広く普及しているため機器の価格が手頃で、省エネ性と価格の両面から、最もコストパフォーマンスの良い冷暖房設備といえます。なお、外気温が極端に低いと効率や能力が下がるため、県内でも標高の高い寒冷な地域では、低温時の暖房能力を高めた寒冷地仕様のエアコンを選ぶと安心です。
照明
LEDが基本
LED照明は、白熱電球に比べて大幅に少ない消費電力で同じ明るさが得られ、寿命も長い照明です。家中すべての照明をLED化することが省エネの基本です。
給湯
家庭のエネルギー消費の大きな割合を占める
お風呂や台所で使うお湯をつくる給湯は、家庭のエネルギー消費のなかでも大きな割合を占めるため、給湯設備の選択は等級を大きく左右します。
- エコキュート:ヒートポンプ技術でお湯を沸かす電気給湯機。エアコンと同じ原理で、消費した電力の3倍以上の熱をお湯として取り出せ、一次エネルギーで比較した効率は給湯設備のなかでもトップクラスです。タンクに貯めたお湯を使うしくみのため、かつては使い切ってしまう「湯切れ」が弱点とされましたが、最近の機種は日々の使用量を学習して沸かす量を自動調整し、残りが少なくなると自動で沸き増しする機能を備えており、ふだんの暮らしで湯切れを心配する場面はほとんどなくなっています。ただし、来客時など普段より大量にお湯を使うときは湯切れの可能性が残る(沸き増しには時間がかかる)ため、家族の人数に余裕をみたタンク容量を選ぶという選択肢もあります。
- ガス潜熱回収型給湯機(エコジョーズなど):従来は捨てていた排気の熱でお湯を予熱するガス給湯機で、熱効率は約95%に達します。ただし燃料を燃やしてお湯をつくる機器のため、一次エネルギーで比較した効率はヒートポンプ式のエコキュートに劣り、等級への貢献もその分小さくなります。タンクが不要でコンパクト、機器価格が手頃という長所があります。
- ハイブリッド給湯機:ヒートポンプとガス給湯機を組み合わせた給湯機。ふだんは高効率なヒートポンプでお湯をつくり、足りないときはガスが瞬時に補うため、効率の高さと湯切れの心配のなさを両立します。
さらに、給湯は「お湯の使用量そのものを減らす」工夫もあわせて評価されます。
- 節湯水栓:お湯の使用量そのものを減らす工夫のある水栓です。たとえば、シャワーヘッドの手元ボタンで体を洗う間こまめに止水できるシャワー、少ない湯量でも浴び心地が変わらないように工夫された低流量シャワー、台所の水栓でレバーが真ん中の位置では水が出る(気づかないうちに給湯機が働くのを防ぐ)タイプなどがあり、意識しなくても自然にお湯とエネルギーの使用量を減らせます。
- 高断熱浴槽:浴槽を断熱材で包み、お湯が冷めにくくした浴槽。追いだきの回数が減り、給湯エネルギーを節約できます。
- 給湯配管の合理化(ヘッダー方式など):従来の配管は、給湯機から伸びる1本の太い管から枝分かれしながら各水栓へお湯を送る「先分岐方式」が一般的で、太い管の中に残ったまま冷めてしまうお湯が多くなりがちでした。これに対し「ヘッダー方式」は、給湯機の近くに設けた分岐の親元(ヘッダー)から、台所・洗面・浴室などの各水栓まで細い管を1本ずつ直接つなぐ方式です。管が細く短くなるため管内に残るお湯が少なく、蛇口をひねってからお湯が出るまでの「捨て水」と配管からの放熱ロスを減らせます。
換気
小さな設備でも1年中動き続ける
24時間換気は消費電力こそ小さいものの、1年中動き続ける設備です。消費電力の小さいDCモーター型の換気扇や、排気する空気から熱を回収する熱交換型を選ぶと、省エネに寄与します。
太陽光発電はどう扱われる?
山梨県は日照時間が全国有数で、太陽光発電との相性が良い土地柄です。ただし、一次エネルギー消費量等級の判定における太陽光発電の扱いには注意が必要です。
- 等級6・7・8の判定:太陽光発電などの再生可能エネルギーによる削減分を含めずに判定します。つまり、建物と設備そのものの省エネ性で勝負する等級です。そのかわり、評価書には太陽光発電の効果を見える化できます。
- 等級4・5の判定:太陽光発電でつくった電気のうち、家の中で自分で使う分(自家消費分)を削減として含めることができます。
また、太陽光発電などを加えて一次エネルギー消費量を実質100%以上削減できれば、「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」となります。「やまなしKAITEKI住宅/ZERO」の場合は、まず建物と設備で35%以上削減(等級8相当)したうえで、太陽光発電などにより年間のエネルギー収支を実質ゼロ以下にする住宅です。省エネ(設備)と創エネ(太陽光)は、順番としてまず省エネ、そのうえで創エネと考えるのがセオリーです。
まとめ
一次エネルギー消費量等級は、家の器(断熱)と設備を組み合わせた「実際に家がどれだけエネルギーを使うか」の総合評価です。器の性能である断熱等性能等級と、車の両輪の関係にあります。
義務化された等級4はスタートライン。断熱等性能等級6以上であれば、一次エネルギー消費量等級6は容易に手が届き、設備選び次第で等級7・8も現実的な目標になります。太陽光発電を組み合わせて光熱費の実質ゼロを目指すことも、日照に恵まれた山梨ならではの選択肢です。
もうひとつ大切なのが、断熱との優先順位です。給湯機・エアコン・照明などの設備には寿命があり、将来、より高効率な最新機種に交換することで、一次エネルギー消費量等級に相当する省エネ性能は後からでも簡単に高められます。一方、断熱等性能等級は、壁の中の断熱材や窓といった家の構造そのものに関わるため、建てた後から性能を上げるのは容易ではありません。予算に限りがある場合は、まず断熱等性能等級をできるだけ上げておく(UA値・ηAC値をできるだけ小さくしておく)ことを優先し、設備は等級6以上を確保したうえで、将来の交換のタイミングでさらに上を目指す、という考え方をおすすめします。
参考資料
日本住宅性能表示基準(平成13年国土交通省告示第1346号)
評価方法基準(平成13年国土交通省告示第1347号)
住宅性能評価を受けなければならない性能表示事項を定める件(平成12年建設省告示第1661号)
国土交通省「新築住宅の住宅性能表示制度ガイド」
山梨県「やまなしKAITEKI住宅指針2025」
国立研究開発法人建築研究所「エネルギー消費性能計算プログラム(住宅版)」