住宅性能表示制度5-1/
夏涼しく冬暖かい家とは?断熱性能の見方
山梨の夏は暑く、冬は寒い――。
甲府盆地は夏の最高気温が全国トップクラスになる一方、冬は放射冷却で朝晩がぐっと冷え込み、一年を通じた寒暖差がとても大きい土地柄です。そんな山梨で、冷暖房に頼りきらずに快適に暮らせるかどうかは、家そのものの「断熱性能」で大きく決まります。断熱性能は、住んでからの快適さはもちろん、毎月の光熱費や家族の健康にも関わる、家づくりでとても重要な性能です。
住宅性能表示制度の「温熱環境・エネルギー消費量に関すること」では、住宅の省エネルギーに関わる性能を、共通のものさしである「等級」で表示します。ここには次の2つの評価があり、どちらも住宅性能評価を受ける際に必ず評価される必須項目で、別記事で紹介している「構造の安定(耐震性など)」、「劣化の軽減」、「維持管理・更新への配慮に関すること」と並ぶ、家の基本性能として国が特に重視している性能です。
- 断熱等性能等級:屋根・外壁・窓など「外皮(がいひ)」の断熱性能、つまり「家の器の性能」を評価するもの
- 一次エネルギー消費量等級:冷暖房・給湯・照明などの設備も含めて、「実際に家がどれだけエネルギーを使うか」を評価するもの
今回はこのうち「断熱等性能等級」の見方を解説します。設備を含めた省エネ性能を評価する「一次エネルギー消費量等級」は、別記事で解説していますので、ぜひセットでお読みください。
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住宅性能表示制度そのもののねらいや仕組み(第三者評価、評価書の種類、10分野の全体像など)は、別記事「家選びの“共通のものさし”-住宅性能表示制度とは?」で詳しく解説しています。
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冷暖房・給湯・照明などの設備も含めて、「実際に家がどれだけエネルギーを使うか」を評価する「一次エネルギー消費量等級」は、別記事「住宅性能表示制度5-2/家計にも環境にもやさしい!エネルギー消費削減対策の見方」で詳しく解説しています。
断熱性能が高い家の3つのメリット
断熱とは、熱が「伝わる」のを防ぐ工夫のことです。断熱性能の高い家には、大きく3つのメリットがあります。
1. 夏涼しく、冬暖かい
断熱性能が高い家は、外の暑さ・寒さが室内に伝わりにくく、冷暖房でつくった快適な室内の温度が逃げにくいため、少ないエネルギーで夏は涼しく、冬は暖かく過ごせます。また、壁・床・窓の表面温度が室温に近づくので、冬に窓際でひやっとしたり、足元が冷えたりする不快感も大幅に減ります。
2. 光熱費の削減が期待できる
熱の出入りが小さくなれば、冷暖房に使うエネルギーそのものを減らせます。断熱性能を高めることは、住んでいる間ずっと続く光熱費の削減につながる、いわば「家に組み込む省エネ」です。
3. 健康にやさしい
断熱性能が高い家は、暖房している部屋と廊下・脱衣室・浴室などとの温度差が小さくなります。急激な温度差で血圧が大きく変動し、入浴中の事故などにつながる「ヒートショック」のリスクを減らすことができます。このほか、血圧の安定による心疾患・脳血管疾患のリスク低減やアレルギー症状の改善、睡眠の質の向上など、健康への良い影響が数多く報告されています。
評価するのは「外皮」の性能
断熱等性能等級で評価の対象となるのは、住宅の「外皮」です。外皮とは、天井(屋根)・外壁・床・窓・玄関ドアなど、室内と外気とを仕切っている部分の総称で、いわば「家の皮膚」にあたります。熱はこの外皮を通って出入りするため、外皮の性能を高めることが断熱の基本になります。なかでも窓は、壁に比べて熱が出入りしやすい弱点になりがちで、複層ガラスや樹脂サッシなど窓の性能が家全体の断熱性能を大きく左右します。
断熱等性能等級の見方
断熱等性能等級は等級1~7の7段階で表示され、数字が大きいほど断熱性能が高いことを表します。各等級の位置づけと、性能の目安となるUA値(外皮平均熱貫流率。後で解説します)の基準値は次のとおりです。UA値の基準値は地域(地域区分)によって異なるため、ここでは山梨県内が該当する3~6地域の値を示します。
| 等級 | 位置づけ | 3地域 | 4地域 | 5地域 | 6地域 |
|---|---|---|---|---|---|
| 等級7 | 最高等級 | 0.20 | 0.23 | 0.26 | 0.26 |
| 等級6 | ZEH+水準 (「やまなしKAITEKI住宅」の基準) | 0.28 | 0.34 | 0.46 | 0.46 |
| 等級5 | ZEH水準 (長期優良住宅の基準) | 0.50 | 0.60 | 0.60 | 0.60 |
| 等級4 | 省エネ基準 (平成28年基準)=現在の義務基準 | 0.56 | 0.75 | 0.87 | 0.87 |
| 等級3 | 平成4年基準相当 | 1.04 | 1.25 | 1.54 | 1.54 |
| 等級2 | 昭和55年基準相当 | 1.21 | 1.47 | 1.67 | 1.67 |
| 等級1 | 上記以外 | ー | ー | ー | ー |
数値はUA値(外皮平均熱貫流率、単位W/(㎡・K))の基準値(この値以下であること)。
各等級のポイントは次のとおりです。
- 等級4:国の省エネ基準(平成28年基準)に相当する水準で、2025年(令和7年)4月からはすべての新築住宅に義務化されたため、「現在の最低ライン」となります。
- 等級5:ZEH(ゼッチ:ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)に求められる外皮性能に相当し、また、長期優良住宅の認定にも断熱等性能等級5以上が求められます。国では、2030年(令和12年)にすべての新築住宅で等級5への適合を義務化する予定としており、等級5は「数年後の最低ライン」となることに注意しましょう。
- 等級6:ZEH水準をさらに上回る、ZEH+(ゼッチプラス)の外皮性能です。冷暖房のエネルギーを大幅に減らせるため、快適性・経済性の両面で効果が大きく、山梨県の認定住宅ブランド「やまなしKAITEKI住宅」でも、この等級6以上が採用されています。
- 等級7:現行制度の最高等級です。
UA値とηAC値―2つの指標を知ろう
断熱等性能等級は、主に次の2つの数値で評価されます。どちらも「小さいほど高性能」です。
UA値(外皮平均熱貫流率)〔単位:W/(㎡・K)〕
室内と外気に1℃の温度差があるとき、外皮1㎡あたりからどれだけの熱が逃げるかを表す数値で、「家全体の熱の逃げにくさ」の平均値です。値が小さいほど熱が逃げにくく、断熱性能が高いことを意味します。断熱材の種類や厚さ、窓・玄関ドアの性能などで決まります。断熱は「熱の出入り」そのものを抑える性能なので、冬に室内の暖かさを保つだけでなく、夏に外の熱気が室内へ伝わるのを防いで冷房を効きやすくすることにも効果があります。UA値は、冬の暖かさと夏の涼しさ、そして冷暖房エネルギーに直結する断熱の基本指標です。
ηAC値(イータ・エーシー値:冷房期の平均日射熱取得率)
夏(冷房期)に、太陽の日射熱がどれだけ室内に入り込むかを表す数値です。値が小さいほど日射が入りにくく、夏の室温上昇を抑えられます。日射を反射するLow-E複層ガラスの採用や、庇(ひさし)・すだれ・外付けシェードによる窓の日よけなどで小さくできます。夏の暑さが厳しい甲府盆地などでは、UA値とあわせて特に意識したい指標です。なお、基準値は5地域で3.0、6地域で2.8などと定められており、冷房の必要性が小さい3・4地域には基準がありません。
豆知識
冬(暖房期)の指標「ηAH値」もある
夏の指標であるηAC値に対して、冬(暖房期)にどれだけ日射熱を取り込めるかを表す「暖房期の平均日射熱取得率(ηAH値)」という指標もあります。こちらは値が大きいほど、冬の日差しで部屋が暖まり、暖房エネルギーを減らせます。断熱等性能等級の基準値にはなっていませんが、日照時間が全国有数の山梨では、「夏の日射は遮り、冬の日射は取り込む」という設計の工夫が省エネの近道になります。
豆知識
Low-E複層ガラスには「遮熱型」と「断熱型」がある
Low-E複層ガラスは、ガラス面の特殊な金属膜(Low-E膜)で熱の移動を抑えるガラスですが、膜を屋外側・室内側どちらのガラスに設けるかによって2つのタイプに分かれます。「遮熱型」は日射を反射して夏の暑さを防ぐのが得意なタイプ、「断熱型」は日射をある程度取り込みながら室内の熱を逃がしにくくするタイプです。一般に、夏の強い日差しや西日が当たる東・西の窓には遮熱型、冬の日射をたっぷり取り込みたい南の窓には断熱型(庇などの日よけにより夏の日射が直接窓に届かないよう設計されている場合)が向いています。窓ごとに使い分けることで、ηAC値を抑えつつ冬の日射熱も活かせます。
地域区分―同じ等級でも基準値は地域で違う
日本は南北に長く、寒冷地と温暖地では求められる断熱性能が大きく異なります。そこで国の基準では、全国を気候条件に応じて8つの「地域区分」(1地域=北海道など寒冷な地域~8地域=沖縄など温暖な地域)に分け、地域区分ごとにUA値やηAC値の基準値を定めています。
山梨県は標高差が大きいため、県内でも3地域から6地域までの4つの地域区分にまたがっています。八ヶ岳南麓や富士北麓などの高原部は東北地方並みの3・4地域、甲府盆地などの平地部は5・6地域です。地域区分は市町村単位(合併前の旧市町村単位)で定められており、県内の該当は次のとおりです。
| 地域区分 | 山梨県内の該当市町村 |
|---|---|
| 3地域 | 北杜市(旧小淵沢町)、笛吹市(旧芦川村)、忍野村、山中湖村、鳴沢村、小菅村、丹波山村 |
| 4地域 | 甲府市(旧上九一色村)、富士吉田市、北杜市(旧明野村・旧須玉町・旧高根町・旧長坂町・旧大泉村・旧白州町)、甲州市(旧大和村)、道志村、西桂町、富士河口湖町 |
| 5地域 | 甲府市(旧中道町)、都留市、山梨市、大月市、韮崎市、南アルプス市、北杜市(旧武川村)、甲斐市、笛吹市(旧春日居町・旧石和町・旧御坂町・旧一宮町・旧八代町・旧境川村)、上野原市、甲州市(旧塩山市・旧勝沼町)、中央市、市川三郷町、早川町、身延町、富士川町 |
| 6地域 | 甲府市(旧甲府市)、南部町、昭和町 |
( )内は合併前の旧市町村。同じ市でも地区によって区分が異なります。
同じ「等級6」でも、4地域ではUA値0.34以下、6地域では0.46以下と、寒冷な地域ほど高い断熱性能が求められます。家づくりの際は、まず建設地がどの地域区分に当たるかを確認しましょう。
結露を防ぐ対策も評価されている
断熱等性能等級では、UA値・ηAC値に加えて、壁の内部などで結露の発生を防ぐための対策が講じられていることも要求されています。
結露と聞くと冬の窓ガラスの水滴を思い浮かべますが、特に注意が必要なのは、壁の中など目に見えない場所で起こる「内部結露」です。室内の水蒸気が壁の中に入り込み、外気で冷やされた部分で水滴になる現象で、放置すると断熱材の性能低下や、柱・土台など構造躯体(こうぞうくたい)の腐朽につながり、家の寿命を縮めてしまいます。断熱性能を高めるほど室内外の温度差は大きくなるため、断熱と結露対策は必ずセットで考える必要があります。
木造戸建て住宅における主な結露対策には、次のようなものがあります。
- 防湿層を設ける
グラスウールなどの繊維系断熱材を使う場合、断熱層の室内側に防湿フィルムなどの防湿層を設け、水蒸気が壁の中へ入るのを防ぐ - 通気層を設ける
外壁や屋根では、断熱層の外側に外気に通じる通気層を設け、壁の中に入った湿気を外へ逃がす(繊維系断熱材の場合は、通気層との間に防風層を設ける) - 窓の性能を高める
複層ガラスや樹脂サッシなど断熱性の高い窓を採用し、窓表面の結露を抑える - 計画的に換気する
24時間換気を適切に運転し、室内の湿気を計画的に排出する(断熱・気密・換気はワンセット)
まとめ
断熱性能は、壁や床の中の断熱材、窓の性能といった「家の器」そのものの性能です。住み始めてからこれらの性能を上げようとすると大がかりな工事が必要になるため、新築時にどこまで高めておくかが勝負になります。
義務化された等級4はあくまでスタートラインであり、ZEH水準の等級5も数年後の最低ラインであるため、これから何十年も住み続ける家の性能としてはやや心もとないのが実情です。夏涼しく冬暖かい暮らしと光熱費・健康面のメリットを考えれば、最低でも「やまなしKAITEKI住宅」が採用する等級6以上は確保しておきたいところです。
参考資料
日本住宅性能表示基準(平成13年国土交通省告示第1346号)
評価方法基準(平成13年国土交通省告示第1347号)
住宅性能評価を受けなければならない性能表示事項を定める件(平成12年建設省告示第1661号)
国土交通省「新築住宅の住宅性能表示制度ガイド」
山梨県「やまなしKAITEKI住宅指針2025」