住宅性能表示制度4/
維持管理の負担を減らす家とは?維持管理対策の見方
家は、建てたら終わりではありません。長く快適に住み続けるには、日ごろの点検やお手入れ、ときには修理が欠かせません。なかでも、キッチンやお風呂、トイレにつながる給排水管や、ガス管といった「配管」は、毎日使っているのに、壁や床の中に隠れていて普段は目にすることのない存在です。いざ水漏れなどのトラブルが起きたとき、点検や修理がしやすい家かどうかで、かかる費用も手間も大きく変わってきます。
住宅性能表示制度の「維持管理・更新への配慮に関すること」は、こうした配管の点検・清掃・補修のしやすさを、共通のものさしである「等級」で表示するものです。今回は、戸建て住宅を建てるときにぜひ知っておきたい「維持管理対策等級(専用配管)」の見方を解説します。
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住宅性能表示制度そのもののねらいや仕組み(第三者評価、評価書の種類、10分野の全体像など)は、別記事「家選びの“共通のものさし”-住宅性能表示制度とは?」で詳しく解説しています。
「維持管理・更新への配慮」とは?
家は、柱・梁・基礎のように長持ちする部分(構造躯体(こうぞうくたい))と、配管や内装・外装のように比較的寿命が短い部分との組み合わせでできています。長持ちする構造躯体については、「劣化対策等級」で劣化の進行を遅らせる対策を評価します。これに対して、配管のようにいずれ補修や交換が必要になる部分は、「日常の点検や補修などの維持管理のしやすさ」を評価するという考え方をとっています。
なお、更新への配慮(更新対策等級)については、マンションやアパートといった共同住宅に適用される評価項目なので、本記事では取り上げていません。
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劣化対策のねらいや劣化対策等級の見方などは、別記事「住宅性能表示制度3/家を長持ちさせる秘訣!劣化対策の見方」で詳しく解説しています。
「日常の点検や補修などの維持管理のしやすさ」として住宅性能表示制度が取り上げているのが、給排水管・給湯管・ガス管です。理由は大きく3つあります。
- どの家にも必ず設置されている設備であること
- 内装や外装に隠れてしまい、普段は状態を確認しにくいこと
- 漏水(水漏れ)やガス漏れが起きると、住む人や建物への影響が大きいこと
ここでいう「維持管理」とは、配管の全面的な交換が必要になるまでの間に日常的に行う、次の3つを指します。
- 点検:水漏れなどのトラブルが起きた箇所を確認すること
- 清掃:排水管の中にたまった汚れや付着物を取り除くこと
- 補修:トラブルが起きた箇所の修理や、部品の部分的な交換を行うこと
戸建て住宅の場合、評価の対象となるのは、専用配管と呼ばれる次の4つの管です。
- 排水管:敷地内の最終ます(下水道につながる点検用設備)からトイレやキッチンなどの排水口までの管
- 給水管:水道メーターから住戸内の給水栓(蛇口など)までの管
- 給湯管:給湯機(エコキュートやエコジョーズなど)から給湯栓までの管
- ガス管:ガスメーターから住戸内のガス栓までの管
なお、「維持管理対策等級(専用配管)」は、住宅性能評価を受ける際に必ず評価される「必須項目」の一つです。別記事で紹介している「構造の安定(耐震性など)」、「劣化の軽減」、「温熱環境・エネルギー消費量」と並ぶ、家の基本性能として国が特に重視している性能です。
維持管理対策等級の見方
維持管理対策等級(専用配管)は、等級1〜3の3段階で表示され、数字が大きいほど維持管理をしやすくする対策が手厚いことを表します。
| 等級 | 講じられている対策 |
|---|---|
| 等級3 | 構造躯体及び仕上げ材に影響を及ぼすことなく専用配管の点検及び清掃を行うことができ、構造躯体に影響を及ぼすことなく専用配管の補修を行うことができる対策 |
| 等級2 | 構造躯体に影響を及ぼすことなく専用配管の点検及び補修を行うことができる対策 |
| 等級1 | その他(等級2に満たないもの) |
イメージとしては、等級2は「建物の骨組みを壊さなくても点検や補修ができる」レベル、等級3はそれに加えて「壁紙や床材などの仕上げ材も傷めずに点検や清掃ができる」レベルです。等級が上がるほど、暮らしながらのメンテナンスが容易になります。
戸建て住宅ではどんな対策をするの?―等級3の5つのポイント
戸建て住宅の場合、等級3と評価されるためには、主に次のような対策が求められます。
- 埋め込まない
配管をコンクリートの中に埋め込まない(壁や基礎などを貫通する部分は除く) - ふさがない
地中に埋めた配管の上にコンクリートを打たない(建物の外にある土間コンクリートなど骨組みに影響しないものや、凍結のおそれがあるためにやむを得ず地中に埋設する場合は例外) - つまらせない
排水管の内面をなめらかにし、たわみや抜けなどの変形が生じないように設置する(汚れがたまりにくく、掃除がしやすくなる) - 掃除口を設ける
排水管に掃除口(清掃道具を入れるための開口)を設けるか、清掃できるトラップ(排水口直下にあり、排水管からの臭いや虫の侵入を防ぐための水だまりをつくる構造部分)を設置する - 点検口を設ける
配管の接合部やバルブなどが壁や床の仕上げ材に隠れる場合は、点検や清掃のための開口(点検口)を設ける
ポイントは、これらが配管そのものの性能ではなく、「配管をどう設置するか」という設計上の工夫だということです。新築の設計段階であれば比較的取り入れやすい一方、完成した後から変更するのは大変です。だからこそ、設計段階で意識しておくべき性能といえます。
維持管理対策等級3をおすすめする理由
維持管理対策等級3は、特別な設備を追加するというより、新築時の設計の工夫で実現しやすく、大きなコスト負担を必要としない対策です。維持管理対策を手厚くしておくと、住まい手には次のようなメリットがあります。
修理費用を抑えやすい
配管がコンクリートや壁の中に埋め込まれておらず、点検口が設けられていれば、不具合箇所の確認や補修が容易になります。壁や床を大きく壊す必要が少なくなるため、修理コストの低減が期待できます。
漏水・ガス漏れなどのトラブルに早く対応できる
点検や補修がしやすい住宅は、異常の発見や原因の特定がスムーズです。水漏れやガス漏れに早く気づいて対処できれば、被害の拡大を防ぎやすくなります。
メンテナンス時の生活への影響が少ない
配管の清掃や補修のために大規模な解体工事を行う必要が少なく、補修工事の期間や騒音、暮らしへの負担を軽減できます。住みながらのメンテナンスがしやすい家になります。
住宅を長持ちさせやすい
設備配管は構造躯体よりも寿命が短いため、定期的な維持管理が欠かせません。適切な点検・補修が行いやすい住宅は、配管のトラブルが建物本体に及ぶのを防ぎやすく、建物全体の長寿命化にもつながります。
山梨県の気候と維持管理の負担を減らす家
山梨県は、甲府盆地を中心に夏の暑さが全国でも有数の厳しさである一方、冬は朝晩の冷え込みが強く、一年を通じた寒暖差が大きい内陸性の気候です。また、富士北麓や八ヶ岳山麓など標高の高い地域では、冬の凍結対策として、給排水管を凍結深度より深く埋設したり、保温材で保護したりする工夫が欠かせません。
このような気候のもとでは、配管や設備にかかる負担も大きくなりがちです。維持管理対策等級3は、将来の配管の点検や交換をしやすくしておく性能です。住宅の設備のメンテナンス性を高めておくことが、凍結などのトラブルへの備えにもなり、長期的な維持管理の負担軽減につながります。
まとめ
「劣化対策等級」が家の骨組みを長持ちさせるための性能だとすれば、「維持管理対策等級」は配管をお手入れしやすくしておくための性能です。どちらも家を長く安心して使うためには欠かせない、車の両輪のような関係にあります。
維持管理対策等級3は、特別な設備を追加するというより、新築時の設計の工夫で実現しやすい性能です。将来の修理費用や暮らしへの負担を減らしたい方は、住宅会社に「維持管理対策等級3にしたい」と伝えて、具体的な対策を確認してみましょう。
主な参考資料
日本住宅性能表示基準(平成13年国土交通省告示第1346号)
評価方法基準(平成13年国土交通省告示第1347号)
住宅性能評価を受けなければならない性能表示事項を定める件(平成12年建設省告示第1661号)
国土交通省「新築住宅の住宅性能表示制度ガイド」